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前ページ次ページ魔法少女リリカルルイズ 朝露に濡れた草の緑は瑞々しく踏むと弾けた水滴がキラリと光った。 キュルケ達が出発を決めたのは、まだ太陽が昇ってからそれほど時間が経っていない、そんな朝だった。 「あの、もう行かれるんですか?」 昨日のうちに仲良くなったのだろうか。 羽を畳んだシルフィードが村の子供達と遊んでいる。 そんな中でシルフィードの背中に乗ろうとしているキュルケをティファニアが不安げに見上げていた。 「ええ、ちょっと急ぎの用事があるのよ」 「でも今は危ないと思うんです」 勝敗は既に決しているとはいえ今のアルビオンは戦争状態にある。 そんな場所を飛ぶのがどんなに危険か。 ティファニアはそう言いたいのだろう。 昨日レコン・キスタの竜騎士に追跡されたキュルケにはそれがよく分かった。 「だけどね、早く助けないといけないのがいるのよ」 「そう……ですか」 シルフィードを見上げると、その背に乗ったタバサがこくんと一つ頷いた。 心配してくれるティファニアには悪いが、ルイズの助けるまではアルビオンから出る気はない。 それは昨日タバサと話し合って決めたことだ。 ギーシュとは話し合ってないが、やる気でいることは聞かなくてもわかる。 「だったら」 うつむいていたティファニアが祈るように胸の前で会わせていた両手をほどき、太陽の昇る方角を指した。 「東の方には行かないでください」 「東?どうして?」 「あっちにはニューカッスル城があるんです」 「ニューカッスル城?] 聞いたことはある。 たしか大陸から突き出た岬の突端にある城のはずだ。 「はい。そっちの方にレコン・キスタの軍隊がたくさん集まっているってこの前聞いたんです」 「レコン・キスタが……」 キュルケは考える。 レコン・キスタが圧倒的勝利を収めつつあるこの時期に改めて戦力を集中させつつある。 それは何故か。 おそらく、この戦争の総仕上げとしてアルビオン王家を圧倒的戦力で討ち滅ぼそうとしているに違いない。 ルイズがどんな任務でアルビオンまで来たかは分からないが、この時期ならアルビオン王家と接触しようとしている可能性は高い。 次の目的地は決まった。 だが、この本気で自分達を気にしてくれているティファニアを心配させたままにしてはおくのは気が引けた。 「そう、ありがとう。気をつけるわ」 だから、キュルケはこう答えた。 「後もう一つ」 「なに?」 「タバサさんとユーノさんのことです」 倒れるくらいに疲労していたタバサは一晩も経たずに回復していた。 決して浅くはない、むしろ深かったユーノの傷も見た限りすっかり癒えている。 キュルケにしてみれば魔法を使っていないはずなのにこの効き目は驚くばかりだった。 「お二人ともまだ病み上がりです。傷も手当てしたけど、まだ治りきってないと思います。ですから、くれぐれも無理はしないでください」 「ええ、わかったわ」 ティファニアは風竜の背中に少し潤んだ目を向けていた。 彼女がみているのはタバサだろうか、それともユーノだろうか。 「それじゃあ、私たち行くわ。昨夜はありがとう。また来るわ。その時はお礼をさせて」 「お礼なんて……」 「いやいや、是非させてくれ」 ティファニアの前に薔薇が差し出される。 ヴェルダンデをシルフィードに乗せた後でギーシュが錬金で作った造花だ。 意外とその出来は良く本物そっくりだ。 「君のような美しいレディにお世話になってお礼の一つもしないのは貴族が廃るという物だ」 ギーシュは戸惑うティファニアの手にそっと薔薇を握らせ、こう言った。 「美しい君にこの薔薇を」 口を少し開けているのは、キラリと光る歯を見せているつもりなのだろうか。 「ギーシュ、おいていくわよ」 「ちょ、ちょっと待ってくれたまえ!」 慌てるギーシュが飛び乗ると、シルフィードは翼を広げた。 「またね、ティファニア」 そのキュルケの声は飛び立つシルフィードの羽ばたきに紛れ、ティファニアには半分も聞こえていなかった。 小さくなっていく村の中で子供達がティファニアと手を振っている。 キュルケは森で村が隠れてしまうまで、手を振り続けていた。 「結婚式……?」 ニューカッスルから疎開する人々が共にアルビオンから離れるフネに乗り込んでいく。 ワルドが結婚式と言いだしたのはアルビオン王家とレコンキスタの決戦を控えた朝だった。 「こんな時、に?」 「こんな時だからだよ」 だが今は姫様から預かった大切な任務の途中。 それにここはこれから戦場となる。 ルイズにはここが式を挙げるのにふさわしい場所とは思えなかった。 「君も聞いたとおりウェールズ皇太子は、この戦争を戦い抜くことで王女殿下を守ろうとしておられる。勇敢なメイジだ。そんな彼に媒酌をお願いすることで君と結婚をして守り続ける証としたい」 白の国アルビオンで王族媒酌による結婚式。平時ならば望外のことであったろう。 だがルイズはうつむいて返答を拒んだ。 「これは僕のわがままだ。だが、そういう形であの皇太子殿下の志を受け継ぎたいんだ。ルイズ、賛成してはくれないだろうか」 ワルドの言うことはわかる。そこまで自分のことを思ってくれていて、それを現そうとしていることは嬉しくも思う。 だけどルイズは「はい」と言えなかった。 大切な物が足りない。 その思いが秋風のようにルイズの心を凍えさせていた。 「ああ、そうだ。もちろんこれは略式だ。トリステインに戻ったら盛大な式を挙げよう。君の両親やお姉様達も招いてね。そうでないと君のお母様の怒りを買ってしまう。それから君の使い魔にもしっかり参加してもらわねば」 足りない物。それがやっと分かった。 お父様、お母様、お姉様。 みんなが待っている式場の中に、ユーノを肩に乗せてゆっくり入っていく。 一番奥にはワルドがいる。 「そうね。わかったわ。ワルド、式を挙げましょう」 ルイズはその光景を思い浮かべ、うつむけていた顔を上げて答えた。 (いいわよね。ユーノ) その念話が遠くに届くようにと心の中で強く叫んだ。 だが返る答えは沈黙だけだった。 大陸から突き出た岬の突端には鉄と人でできた異形の草原が生い茂っていた。 その正体はレコン・キスタの軍勢である。 「は、はははは。すごい人数じゃないか」 壮観。そうとしか言いようのない光景である。 これほどの規模の軍勢が、この岬と同じ広さの土地に集結したことなど、おそらくハルケギニア史上でも数えるほどしかないだろう。 そして、その人の草原から草いきれのかわりに上り立つ殺気のようなものは、岬から離れた小高い丘の上からレコン・キスタを見下ろすキュルケ達の所までむっと漂っていた。 それを浴びたキュルケは夏の蒸し暑い熱風を浴びたように体中を汗でじっとりと濡らしていた。 「なんて大軍なんだ。10万はいるんじゃないのか?」 ギーシュの声は震えていた。笑っているようにも聞こえる。 見栄っ張りの彼のことだ。隠そうとはしているのだろうが隠しきれていない。 だからといってキュルケはギーシュのことを非難したり臆病者呼ばわりする気にはなれなかった。 「そこまで多くはないでしょ。そうね……5万ってところじゃないかしら」 無論、数えたわけではない。 キュルケも貴族の娘。戦争を見たことだってある。 だが、それと比べてこの軍勢はなんと多いのだろう。 口の中には何もないのに、無性に何かを飲み込みたくなった。 「あなたはどう思う?」 それに比べてタバサはどうか。 いつもと変わらず、汗一つかいていない。 その二つ名の雪風のごとく、冷めた目をレコン・キスタに向けていた。 「たぶん、3万くらい」 キュルケは再び軍勢を見下ろす。 レコン・キスタが攻め込もうとしているのは岬の突端にある小さな城ニューカッスルだ。 「10万、5万、3万か……随分ばらばらね」 つまり当てにはならないということである。 だが、どの数字であってもニューカッスル城に立てこもる利を軽々と踏みつぶせる戦力であることには変わりない。 「で、どうするんだい?ヴェルダンデはルイズはあの城の中にいると言っている」 なら、あの城に行かなければいけない。 そのためにここまで来たのだから。 「あの中を突っ切るのはできないよね」 「当たり前よ」 今にも城に攻め入ろうとする3万以上の軍を突き破ってニューカッスル城まで行けるはずがない。 「なら……そうだ、シルフィードで飛んで行けばいい」 「無理」 ぽつりと呟くタバサは軍勢の上を見ていた。 そこには無数の竜騎士が飛んでいる。 数は多いが士気にムラのある傭兵の多い地上よりも、正規の騎士のみで構成された竜騎士の守る空の方がむしろ警戒は厳しいかも知れない。 「なら、ヴェルダンデに城の中まで続く抜け穴を掘らせよう。そこを潜るんだ」 「それはいいけど、穴の中を這っていくの?」 「もちろん」 狭い半島の中とはいえ、レコンキスタは軍を広い範囲に展開している。 仮にその外側ギリギリから穴を掘ったとしても城の中までは何キロもある。 「無理でしょ」 その距離を這って行くとなると何時間もかかる。しかも暗闇の中をだ。 実際にはレコン・キスタに見つからないようにもっと遠くから穴を掘らなければならない。 それでは開戦までにルイズの元にたどり着けはしないだろう。 「陸はだめ、空もだめ、地下もだめ……え?」 その時キュルケの頭にひらめくものがあった。 「それなら」 地下。そう、他の場所ならともかくアルビオンの地下は他とは違うのだ。 ひらめき。それを覚えたのはキュルケだけではない。 「え……?」 ただし、それはキュルケのひらめきとは全く別のものだ。 ユーノの頭に走った閃光は声を伴っていた。 (ユーノ) それは念話に似ていた。しかもルイズの念話だ。 だが、ここからニューカッスル城までは離れすぎている。 ルイズの念話が届くはずがない。届くには他の何かの介在が必要だ。 それを証明するかのように、ユーノの目にはここではないどこかが映っていた。 「おい、相棒。どうしたんだ?」 「何か見えるんだ」 椅子に座る足。その膝に当てられた震えるきつく結んだ手。 それはルイズの手と足であることは彼女の肩が居場所のユーノにはよく分かった。 だとすると、これはルイズの見た光景なのだろう。 使い魔のみているものをその主人は見られるという。ちょうどその逆が起こっていた。 うつむいていた視線が起き上がる。 膝と手は視界から外れ、新たに入ってくるものがあった。 ワルドだ。彼は片手をルイズに差し出し、言った。 それがユーノにも聞こえた。 (ルイズ、式の。結婚式の準備はいいかい?) 「だめだよ、ルイズ!」 その時既にユーノの足は地面を蹴り、ニューカッスル城に向けて駆け出していた。 「ちょっと、どこに行くの?」 気付いた時には既に遅かった。 キュルケの隣に後ろ足で立っていたフェレットのユーノは突然駆け出し、草の間に隠れどこにいるかも分からなくなってしまう。 「どうするんだ?ルイズの使い魔が行ってしまったじゃないか」 慌てるギーシュをそのままにしてキュルケは考えをまとめる。 何故ユーノが駆け出したか、それは分かりようもない。 だが、使い魔と主人の間にはつながりがある。ユーノもルイズとつながりがあるのは間違いがない。 ユーノが走り出したのは、そのつながりでルイズの状況が分かったからではないか。 それなら、このまま行かせてもいいかもしれない。 「いいわ。私たちは私たちで行きましょう」 だからといってキュルケ達もじっとしてはいられない。 ルイズを確実に助けるためにはやはりニューカッスル城まで行く必要がある。 「行くってどこから?」 「下から行くのよ」 「下?地下はさっき君がだめだといったばかりじゃないか」 キュルケは人差し指を足下に向ける。 「だから、地下じゃなくて下なのよ」 前ページ次ページ魔法少女リリカルルイズ
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第十一話『ルイズVSキュルケ』 「ねえ、その本どうしたの?」 ここはルイズの部屋――夜も更けた頃、リンゴォが一冊の本を読んでいた。 「これか? 借り物だ」 勿論本人には無断で借りている。 「ひょっとして図書室から勝手に持ち出したんじゃないでしょうね? そういう規則には厳しいんだから、ばれない内に返しときなさいよ?」 「それもそうだな…。それに、どうやら本を読むのはまだ難しいようだ」 リンゴォは立ち上がるとドアの方に歩いていく。 「え、今から行くの?」 「ああ。忘れ物も思い出したしな」 「っていうかアイツ…字が読めないんじゃなかったの?」 ルイズ一人の部屋を二つの月が照らしている。 (それにしても――) (アイツ、プライドっつーモンがあるのかしら?) 戻るつもりは無い、だとか言っておいて、リンゴォは何事もなかったように帰ってきた。 自分なら、あんな啖呵を切った手前、どんな顔をしていいのかさえわからない。 (いえ…逆ね……) 彼にとっては、同じなのだ。自分など、いても、いなくても。 何事もなかった『ように』ではない、本当に『何事でもなかった』のだ。 (つくづく人のプライドを…壊してくれる使い魔ね……) 「ねえアンタ…わたしが『強くなれる』って言ったの……本当?」 誰もその言葉に答えるものはいない。 (ああ…鞘を抜かなきゃ喋れないんだっけ…) ルイズはその『剣』を引き抜く。 「おうよ! このデルフリンガーに二言はねぇぜ!」 「いいか嬢ちゃん、真剣ってのは案外重いモンでやたらめったら振り回しても――」 「あのね! 別にわたしがアンタを使うわけじゃないのよ! 見てわからない? こんなか弱い、うら若き乙女が…」 「じゃああの時強くなるって言ったのはウソかよ! そうは思えねぇぞ!」 「それとこれとは別よ! アンタは別の男が使うの! …多分だけど」 「何ィ、聞いてねえぞ! それに多分ってのは――」 ルイズはデルフリンガーを鞘にしまった。 この剣を買ったはいいのだが、その後の出来事に呆気にとられ、リンゴォには渡しそびれていた。 それに、キュルケとの賭けもある。あまり対等と呼べるものではないが、それでも賭けは賭けだ。 (それにしても…失礼な剣ね! 強くなるっていったら、普通は魔法じゃないのよ! そんなにわたしがメイジに見えないっていうの? メイジの強さは、魔法の強さよ!) ――ならば、自分の強さは? 考えるまでもない。だから強くなると誓ったのだ。 魔法の使えぬメイジなど、他の誰が許しても、己の心が許さない。 (だけど…魔法が使えるようになって、なったとしてそれで――― アイツに、リンゴォに何の関係があるのよ?) ルイズが求めるのがメイジとしての強さなら、リンゴォにそれを誓う必要は無かったはずだ。 (ギーシュは何が強くなったの?) 『強くなる』というのは、剣だとか魔法だとか、そういったレベルの話ではないような気がする。 (じゃあ、何だっていうのよ!) それが、わからなかった。 考えてもわからないなら、動かすのは体だ。 「魔法を使えるようになることには、とりあえず何の不都合もないのよ!」 ルイズはこっそりと外に抜け出た。 ルイズは割りとくよくよ悩むタチだ。 だがルイズはくよくよと悩んでいる自分が好きではないし、悩むだけでは終わらないタチだ。 夜の広場。爆音を気にするような人は近くにはいない。 爆風が悩みを吹き飛ばしていく。 唱えては爆風。振り下ろしては爆音。無心に、それを繰り返す。 要するに、全然成功していないという事だ。 「ハァ…ハァ…! ……何なのよ…!」 結局何の進歩もないことにルイズは毒づく。 「わたしの…何が悪いのよ…!」 吹き飛ばした悩みが、おまけをつけて戻ってくる。 全て完璧だったはずだ。なのになぜ失敗する? サモン・サーヴァントはルイズにわずかな希望を与えた。 成功した! そう思った。 少しだけ希望で喜ばせておいて…結局そんなものは無価値だ、と断じられる。 悩みは吹き飛ばしたってあっという間に帰ってくる。 いっそ、爆発も無い静寂であれば、もっと穏やかに生きられたかも知れぬ。 一心同体であるはずの使い魔の目…余計に自分を沈ませる。己を『ゼロ』だと断じている。 ――お前は、無価値だと―― なぜ自分は貴族なんかに生まれてしまったのか? なぜ強くなるなんて誓った? 魔法も使えず、どう強くなる? 悩みを忘れるためにここへ来て、結局再びそこに囚われている。 何かわからないものへのどうしようもない怒りが、ルイズに杖を振らせた。 「何をしているんです?」 後ろから、声がかけられる。 「ミ…ミス・ロングビル……」 人に気付かれぬようにこっそりと練習していたはずが、ルイズは随分と大きな爆発を起こしていた。 「何をしているんです? こんな夜更けに一人で出歩いて」 よりにもよって、オスマンの秘書に見つかってしまった――マズイ、とルイズは思いながらも、 正直ありがたいと思った。 あのまま一人でいては、色んなものに押しつぶされそうだった。 とはいえ、夜中に抜け出しているところを見つかったのは問題だ。 「…あの~、この事はどうか、ご内密に――」 「聞こえませんでしたか? こんな夜中にこんな所で何をしているんです?」 こういう性格だから、オスマンの秘書が務まるのだろうな、とルイズは観念した。 「……その…魔法の、練習を……」 ロングビルは一瞬呆けたような顔を見せたが、すぐにいつもの冷静な表情に戻った。 「…練習ですか……ああ、あなたは――」 そこでロングビルの言葉が途切れる。 『ゼロのルイズ』――最後まで言われなくても彼女が何を言いたいかぐらいルイズもわかる。 「誰でしたっけ?」 「へ?」 予想外の答えに、ルイズは素っ頓狂な声を上げた。 「授業にも障りが出るというのに淑女の卵がこんな時間に出歩いている……本来であれば、 上に報告しなければならないところですが、名前がわからなくてはどうしようもありませんね…」 名前なんて今聞けばわかる。ルイズは理解した。この場は見逃してくれる、という事だ。 厳しそうな人だとばかり思っていたが、案外それだけでもないのかもしれない。 「魔法の練習も結構ですが、それはレディの格好ではありませんよ。 一人前のレディになりたければ、早く部屋に帰って、明日に備えて寝ることです」 言われてみれば、ルイズの服(ルイズ自身も)は随分と汚れている。 見逃してくれた事への感謝の意味も込め、ルイズは一礼してその場を去ろうとする。 が、頭にこびり付いた『ある疑問』がルイズをその場にとどめた。 「あの…『強い』って何なんでしょうか……?」 ルイズはなぜ自分がこんな質問をしているかわからなかった。 ロングビルも不思議そうな顔をしている。が、すぐにもとに、いや少しだけ表情を緩ませた。 「…『強い』とは…そうですね、『土』でしょう」 「いえ、属性とかそういう話じゃなくて――」 「大地は――土は常に我々を支えています。土は流した血も涙も屍も、拒む事はありません。 どんな人も、大地なしには生きられません。そして土へと還っていきます。 大地にはこれまでの歴史の全てが埋まっているのです。これを強いと言わずしてなんとしましょう?」 「なぜ落ち込んだとき人は下を向くかわかりますか?」 「…いいえ……」 「土は我々に力を与えてくれるからです。大地を見れば勇気がわいてくる。 『勇気』とは『強さ』です。大地があるから人は立ち上がれるのです」 「…話が過ぎましたね。さ、これ以上遅くならないうちに部屋に帰りなさい。 こんな夜中をうろつくのは、今日が最後ですよ? そうでなくても、最近は物騒なのですから」 ロングビルが歩き出す。ルイズも今度こそ部屋に帰ろうと歩き出した。 「ミス・ヴァリエール!」 その背中を、今度はロングビルが呼び止める。 「強くなりたければ、根を張りなさい。 一度も空を飛んだ事の無いあなたなら、誰よりもそれがわかるはずです」 返事はしなかった。 ロングビルの姿が見えなくなる。 (やっぱり、名前、わかってたんじゃない――) ――翌日、ルイズは何事もなく授業を終えた。 なんだかタバサの具合が悪そうに見えたが、それはどうでもよかった。 デルフリンガーを携え、キュルケの元へ向かう。そう、『賭け』のためだ。 キュルケの自室には、キュルケと、もう一人タバサがいた。 頬がこけて見えるし目の回りにはクマも浮かんでいる。本当に大丈夫だろうか? 「なんでも、昨日の晩の爆発音が気になって寝不足だったらしいわよ。 わたしはそんな音全然聞こえなかったんだけどね。ルイズ、アンタは聞こえた?」 「全然聞コエナカッタワヨ? 幻聴ジャナイ?」 そんなことはどうでもよろしい。 「で、諦める覚悟は出来たの? ルイズ」 「何を諦めるって言うのォ? ミス・ツェルプストォォオ」 「決まってるじゃないの、マイ・ダーリンよ。アンタとダーリンじゃ不釣合いなんだから、 さっさと引越しさせてあげなさいよ。そしてここは! 二人の愛の巣となるのよ!」 いつの間にかベッドに仰向けになったタバサが、露骨に嫌そうな顔でキュルケを見ている。 「バカ言ってんじゃないわよ! 勝つのは――」 「何の話?」 タバサが話に割り込んでくる。人の話を邪魔しないでほしい。具合悪いなら帰ったら? 結局、キュルケが事情を一から説明する。 それを聞き終えたタバサが一言。 「公正じゃない」 風向きが変わる。チャンスだ、ルイズはそう思った。 「ちょっとタバサ、何言ってんのよ! ルイズは自分でこの『賭け』を受けたのよ?」 「その通りよタバサ、残念だけど、キュルケはこのぐらいハンディがなきゃ勝てないのよ」 さあどう出るキュルケ! 「聞き捨てならないわね! いいでしょう! 『公正』に! 『決闘』といこうじゃないの!」 かかったァ――ッ! サンキュー、タバサ! 「時は今夜! 所は中庭ッ!」 落ち着きなさい、ルイズ・ド・ラ・ヴァリエール。冷静にイニシアチブをとるのよ…。 「待ちなさいよ、方法はどうするの? リンゴォの時のようにはいかなくてよ? 貴族同士の決闘は禁止されている」 「フフ…貴族同士の決闘ってのは、要するに魔法を使った決闘って事でしょ? 魔法を使わなきゃ、ただの悪ふざけ、決闘でもなんでもない……そこでよ! 決闘方法は『剣』ッ! わかりやすいでしょう?」 耳を疑った。何を言ってるのだこいつは? 二人とも剣なんてド素人のはずだ。 命のサジ加減がつかない! 下手をすれば二人とも死ぬッ! 「…正気?」 「恋は狂気よ。それとも怖いの? ヴァリエール」 今度はルイズに火がついた! 「上等じゃない! 受けて立つわッ! 首を洗って待ってなさい!」 啖呵を切って部屋を出るルイズ。 「…本気?」 タバサが尋ねる。 「安心しなさいよ。何も命の遣り取りをしようってんじゃないわ。 あのナマクラ刀をへし折って……それで終いよ」 「ねぇ、アンタの事、わたしが使う破目になったわ」 「オオッ、うれしいこと言ってくれるじゃないの、それじゃ、トコトンやってやるからな」 「勘違いしないでよね! 今回だけなんだから!」 そう、今回で終わるかもしれない。人生も。 ルイズはデルフリンガーを構えてみる。 「どう?」 「何が?」 「何がって、わたしの構えよ! それぐらいは教えてくれてもいいんじゃないの!?」 「そーだなァ、もうちょっと腰を落として……」 夜は更けゆく。 ――深夜、中庭――三人の少女の影。そのなかに、一頭の竜が舞い降りる。 「立会人はタバサよ。いいわね?」 「危なくなったら、シルフィードが止める」 万が一の起こる直前に、風韻竜の超高速の一撃で全てを終わらせる腹積もりだ。 ルイズは無言で頷く。 四、五歩ほどの距離に二人は立つ。 「構え」 ゆっくりと剣を引き抜く。 ルイズの構えは、デルフリンガーのアドバイスでマシになったにせよ、素人丸出しである。 対するキュルケも剣は素人であるが、天性のものか、なかなか堂に入って見える。 ――これほどか―――― キュルケは今初めて、己が相手の命を握っているのを知った。同時に相手も、己の命を握っている。 ルイズは大上段に、キュルケは脇構え。 二人ともでまかせの剣技である。それ故、対手の命がか細く見えた。 「始め」 タバサの声。 キュルケは恐怖した。ルイズにではない、己自身にである。 果たして、ルイズを生かせるか? ――甘い。 タバサはそう感じた。 命を張り合った事に、ここまできて初めて気付いた。それで、どうするというのだ。 もっとも、そんなキュルケをわかっていたからこそ、タバサは友を止めなかった。 ルイズのほうは、予想以上に肝が据わって見えるが、それでもためらいが見て取れる。 結局、両者に大した違いは無い。 キュルケが動いた。 不安と焦りからか、一気に距離を詰めるキュルケ。 一方のルイズは、まだ動かない。 「マダだッ、まだ動くなよッ、嬢ちゃんッ!」 キュルケが剣を振る。ルイズに当てるわけにはいかない。剣は虚空を斬る。 「今ッ!!」 地を踏みしめ、腹の力で一気に振り下ろす。 キュルケの剣は、あっさりと折れた。 勝者も敗者も、何も言わなかった。 心の底から安堵した。相手が生きていた事に。 心の底から恐怖した。友の命を握った自分に。 勝負の行方は、タバサの予想通りに収まった。ただ、どちらが先に動くかの違いだ。 (なんだかんだで、仲がいい……) タバサは二人の関係を、少しうらやましくも思った。 わずかな振動にタバサは気付く。 直後、大気ごと地面が震えた。 『それ』を見た瞬間、タバサはシルフィードに二人を乗せ上空へと退避する。 「デカいッ! ゴーレムよ!」 その巨大なゴーレムを目にした二人が慌てふためく。 「どっ、どうすんのよ!」 「どうするって、敵でしょ、敵! どー見ても!」 「だったら! 攻撃あるのみよ!!」 先走ったルイズが放った魔法は、30メイルもあるゴーレムにかすりもせず、 地面と壁を爆破するだけに終わった。 「……すみませんでした…調子コキ過ぎました……」 こうして、『土くれのフーケ』との戦いが始まることとなる。
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システム変更点 通常技 ドライブ OD(オーバードライブ) 必殺技 DD コンボ システム変更点 通常技 ドライブ OD(オーバードライブ) 必殺技 DD ボル・テードのダメージ、保証が若干低下 レク・ヴィノムが足属性、動作終了まで被カウンターに コマンドが2363214+Cに コンボ 名前 コメント すべてのコメントを見る
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autolink ZM/WE13-24 カード名:素直になれない ルイズ カテゴリ:キャラクター 色:赤 レベル:0 コスト:0 トリガー:0 パワー:1500 ソウル:1 特徴:《魔法》?・《虚無》? 【自】[このカードの下のマーカーを1枚控え室に置く]このカードがアタックした時、あなたはコストを払ってよい。そうしたら、あなたは相手の前列のレベル0以下のキャラを1枚選び、控え室に置く。 【起】[このカードをレストする]このカードの下にマーカーがないなら、あなたは自分の山札の上から1枚を、このカードの下にマーカーとして置く。 ……はあ?デレデレなんてしてないわよ! レアリティ:R illust. 初出:アニメージュ 2008年6月号 12/05/01 今日のカード。 アタック時にマーカーを消費することで、レベル0限定で相手前列の除去が行える。 移動キャラや、相打ち耐性を持つキャラなどをストック消費無しで対処できる点は非常に優秀。 反面、マーカーを置くためには自身のレストが必要なため、次女 カトレアなどでスタンドさせない限りは1ターン待つ必要がある。 早い段階で出せずに効果を発揮できなかったり、除去やバウンスによってマーカーが外れてしまう場合も考える必要があるだろう。 パワーは1500と控えめだが、このカード自身のバトルでも相手をリバースさせることができれば、一度に2枚ものキャラを控え室送りにできる。 このカードがいる状況で2枚以上前列を展開してくる相手は稀だろうが、アタック回数を縛れると考えれば悪いことではない。 運良く生き残ることができれば、再度効果を使うことも可能。
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前ページ次ページ魔法少女リリカルルイズ ルイズの生活で変わったのは早朝の練習だけではない。 放課後も少し変わってしまった。 今までのように宿題に予習、復習をすませてしまった後はユーノが言うところのミッドチルダ式の魔法を使うために必要な勉強が待っている。 ユーノが先生になっての1対1の授業にルイズは1つの感想を持っていた。 「ユーノを甘く見てたわ」 ユーノは幼い見かけによらず先生としてはかなり厳しいのだ。 別に手をあげたり、怒鳴ったりするわけではないがとにかく手をゆるめない。 しかも 「学院でいつか勉強するんならいいんだけど、そうじゃないみたいだから」 と言って今まで聞いたこともないようなことまで勉強することになっていた。 「ユーノ、ここはこれでいいのね」 今日もユーノが口頭で伝えることを羊皮紙に書いていく。 ユーノがまだ読み書きを覚えていないので教えられたことをまとめているのだ。 今、書いていっているのは、なんでもモノが動くときの法則らしい。 ルイズがいきなり空を飛ぶようになったので、安全に飛ぶためにはこれを覚えないといけないそうだ。 「それでいいよ。それで次は……」 ユーノは新しい羊皮紙を出して、それに不思議な図形を書いていく。 だが、それよりもルイズにとってはこの少年に姿を変えるフェレットのほうがずっと不思議で、ペンを走らせる手元よりまだ幼い顔のほうを見上げていた。 扉のノブを回す音が聞こえた。 近頃この音には敏感になっている。そうでないと困るからだ。 ユーノとルイズは目をあわせた。 その途端、扉が勢いをつけて開けられる。 ユーノは素早く変身。 人間の姿からフェレットの姿に変わる。 「ルイズー、いる?」 いつも通りノックもせずに入ってきたのはキュルケだ。 「いるわよ。で、なんの用?」 キュルケはルイズの部屋をじっくり物色。 「別にないわよ。あなたの部屋から声がしたから男でも来てるのかと思ったのよ」 「来るわけないでしょ!」 「ホントに?」 「ホントよ!」 「隠さずに教えなさいよ」 「いないって言ってるでしょ!」 近頃キュルケはルイズの部屋に奇襲をかけてくる。 どうやら、ルイズが謎の少年を隠していると考えて、それを暴こうとしているらしい。 「それにしても……」 キュルケはゆっくり床を見回す。 「ルイズ、あなた、部屋を散らかしすぎよ」 ルイズの部屋は羊皮紙で溢れていた。 今まで学んだことの証なのだが、まだそれらは整理できていない。 「一体、近頃何を書いているのよ」 キュルケが床に落ちている羊皮紙を一枚取ろうとするのを見てルイズは大いに慌てた。 「止めて、キュルケ!動かさないで!」 「なに言ってるのよ。こんなに散らかっているのよ。一枚くらい動かしてもいいじゃない」 「私にはわかるように置いてあるの!!!」 必死である。 今動かされてはページのつながりが何が何だかわからなくなってしまう。 ルイズの血走りそうな目を見てキュルケは後ずさる。 「わ、わかったわよ。まあ、今夜はこれでいいわ。じゃあね」 来たときと同様キュルケは唐突に部屋を出て行った。 「ふー」「ふー」 ほっと一息つく二人。今夜もユーノのことはばれずにすんだ。 「でも……」 ルイズは部屋の床を見回す。 「やっぱり、そろそろ整理しないといけないわね」 「それで私が呼ばれたのですね」 「そーよ」 ルイズの部屋に呼ばれたシエスタは針と糸で丁寧に重ねられた羊皮紙を縫い綴じていく。 床にそのまま起きっぱなしでは読み返すのにも不便なので本にして綴じてしまうことにしたのだ。 「シエスタさん、上手ですね」 「あ、はい。糸と針を使うのには慣れていますから」 作業を効率的に進めるためにシエスタとユーノが並んでいるのがなにか気になった。 ああやって、仲が良さそうに話しているのもなにか気になる。 「それにしてもユーノさんって物知りですね。本の作り方まで知ってるなんて」 製本の方法を教えたのはユーノだ。 おまけに装丁まで綺麗にしている。 「古文書の修復をしたときに教えてもらったんだ」 ルイズはユーノの知識に度々驚かされていた。 自分よりずっと小さいはずのユーノが、ずっとたくさんの知識を覚えることのできるフェレットの世界について気になることもしばしばだ。 が、今はそれより気になることがあった。 メイドとユーノが近寄っている気がした。 もう少し私の方にも近寄りなさいよ! とは言えない。 なんか知らないが言えない。 なので別のことを言うことにした。 「そこっ、口じゃなくて手を動かしなさい!まだこーーんなにあるのよ」 「はいっ」 「はい」 二人が手に集中するようになってもルイズはまだイライラしていた。 キュルケはちょっと頼みたいことがあってタバサの部屋の前まで来た。 扉をノック。 返事はない。 いつも通りだ。 もう一回叩く。 今度はノックといえるようなコンコンという音が出るような叩き方ではない。 ドンドンという音である。 これもいつも通り。 それならばとキュルケもいつもと同じ手段に出る。 扉にアンロック。 鍵は開けられてしまう。 そして、今度は扉を開ける。 「ちょっと、タバサ!」 が、部屋の主はいない。 いつもならここにいるはずなのにいない。 「タバサ、どこに行ったのかしら」 少し考えると心当たりがあった。 近頃あそこに行っていることが多い。 心当たりの場所に行っていると同級生の声がちょっと聞こえてきた。 「よかったわね。あなたの使い魔、帰ってきたのね」 「ええ。でも、火傷みたいな怪我をしているんです。戻ってきたときには誰かが手当てしてくれてたみたいなんですけど」 「まあ、その親切な方にお礼を言わねばなりませんね」 先日、ある生徒の使い魔の猫が行方不明になっているという小さな事件があった。 使い魔をなくした生徒は一日中泣いて悲しんでいたのでキュルケも気まぐれで探してみたが、やっぱり見つけることはできなかった。 その猫が戻ってきたらしい。 それならもう気にする必要はないだろう。 キュルケはそのまま素通りした。 キュルケがタバサの居場所として当たりをつけたのはここ、図書室だ。 タバサは自分が読む本は買って部屋に置いておくタイプだが、ときどき図書室に足を運ぶこともある。 ちょっと探してみると案の定、本を読んでいるタバサを見つけた。 「見つけた、見つけた。タバサー」 トリステインでも図書室では静かにするものだが、そんなのお構いなし。 自分の用事の方が大切だ。 タバサのいる机まで走って横の椅子に手をかける。 「ちょっと、いい?」 「だめ」 「なんでよ」 タバサがキュルケの言うことをこうもあっさり切り捨てることは少ない。 「友達がいる」 「……タバサ、あなた新しい友達ができたの?」 タバサはこくりとうなずく。 そういえばタバサの隣の椅子の前には本が何冊か置かれている。 タバサが持ってきた本ではないとすると、タバサの友達が持ってきた本かも知れない。 そうなると、その隣の椅子にはタバサの友達が座っていたことになる。 今いないのは本を探しに行っているのだろうか。 「ねえ、誰よ。その友達って」 キュルケはこの変わりものの新しい友達というのが少し気になった。 「そこにいる」 タバサはキュルケが座ろうとした椅子を指さす。 誰もいない。 「どこにいるのよ」 「もう少し前」 視線を前の方に動かしてもやっぱり誰もいない。 前に動かしすぎて本棚が見えてきたので視線を元に戻す。 そこで気づいた。 机の上になにかが立てられていた。 いや、立っている。 風変わりな文鎮か筆立てかと思っていたが、それはよく見ると動物だった。 さらによく観てみると、どこかで見た気がする。 間違いない。ルイズの使い魔のフェレットだ。名前はユーノと言ったはず。 「ねえ……この子が……新しい友達?」 タバサがこくりとうなずく。 どうやら冗談ではないようだ。 タバサが冗談を言う方が驚異ではあるが。 本のページをめくる音がした。 「!!!」 目をみはる。フェレットのユーノが本のページをめくっているのだ。 しかも視線の動きを追っていると本を読んでいる。 フェレットが本を!! 本を読み進めていたユーノは視線を止めた。 首をちょこんとかしげる。 他人の使い魔が何を考えているのかなんてわからない。 動物の考えを理解するのと同じだからだ。 だがキュルケにはわかった。フェレットのユーノは悩んでいる。 タバサもそれを理解したらしい。 横に重ねられていた国語辞典を広げてユーノの前に持って行き、重要そうな記述の行を指でユーノに示す。 ユーノは2回うなずく。 タバサも2回うなずき自分の本を再び読み始める。 その間にユーノは自分と同じくらいの長さがあるペンを抱えて、横に置いてある羊皮紙になにやら書き始める。 「使い魔が……読書……」 キュルケは頭がくらくらしてきた。 そのメモを見てみるとトリステインで使われている文字で単語が書かれていた。 単語の横には見たことのないが、文字とわかるもので単語が書かれている。 ゲルマニア出身のキュルケはその形式に見覚えがあった。トリステインに留学が決まった時にこれと同じようなことをしたからだ。 「ねえ、ユーノ。これってもしかして、単語帳?」 振り向いたユーノが2回うなずく。 「そ、そう……がんばってね」 キュルケは振り向いて図書館の外へ歩く。 タバサに頼もうとしていた用事は忘れてしまっていた。 図書館から出るとフレイムが扉の側で待っていた。 キュルケを見上げている。 「ねえ、フレイム。あなたも本を読んでみる?」 フレイムはあくびをしながら炎を吐いた。 ぶはっ。ぶはっ。 前ページ次ページ魔法少女リリカルルイズ
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前ページ次ページ魔法少女リリカルルイズ ゴーレムの右腕から音を立てて火矢が飛び出す。 ねらいはシルフィード。それに、その背中に乗っているタバサ、キュルケ、ルイズ、ユーノの4人。 「少し右」 きゅい。 シルフィードは体を少し傾けて、火矢がうまく追ってこられるように進路を変えてやった。 「ねえ、タバサ。この方法、やっぱり無理があるわよ」 キュルケは風にばたつく髪を押さえている。 「大丈夫」 「でもね、あの火矢をおびき寄せてゴーレムに当てるなんて無理がありすぎるわ。フレイム・ボールも敵を追いかけるけど、使ったメイジに当てるなんてできないのよ」 「フレイム・ボールとは違う」 タバサは横目で火矢が地面をえぐった後を見る。 「追いかけるという性能では、火矢はフレイム・ボールよりずっと下。だからできる」 「それはよくても……タバサ!後ろ後ろ!」 キュルケの後ろには呪文を唱えるルイズ──ではなく、リリカルイズ──と彼女が落ちないように支えているユーノがいる。 さらにシルフィードの尻尾の向こうでは火矢が急速に距離を詰めつつある。 「あなたのシルフィードの方が遅いのよ!追いつかれる!」 「大丈夫」 タバサは小さく呪文を唱え体をねじりながら杖を後ろに降る。 空気に空気をたたきつけるエアハンマー特有の音がキュルケの耳を打つ。 きゅいっ。きゅきゅいっ。 音と同時にシルフィードは急加速。 青い風になったシルフィードは火矢との距離が開げた。 「ねえ、さっきのエアハンマー。何に使ったの?」 タバサは答えない。 ただ、そのときのシルフィードは涙目になっているようにキュルケには見えた。 「あなたも大変ね」 きゅい。 今度は風竜の瞳がきらりと光る。 キュルケはシルフィードが訴えかける目をしているような気がした。 暴走するジュエルシードはさらなる魔力を放出する。 それはゴーレムにさらなる力を与え、変異を促した。 さらに数発の砲撃の後にゴーレムは動きを止める。 キュルケがいぶかしんで見下ろすとゴーレムの胴体がぼろぼろと崩れ出した。 「あら、終わり?」 そうではない。 崩れたのはゴーレムの表面だけ。 その下からはハリネズミのの針ように胴体を埋め尽くす無数の砲身が姿を現す。 「ちょっと!何よ、あれ!」 「ちょうどいい」 あわてるキュルケとは反対にタバサはいつもと変わらない。 シルフィードに命じて少し降下し、羽を左右に振らせる。 「挑発してどうするのよ!」 「まだ火矢が足りない」 「ええっ!?」 ゴーレムの視線が上を向き、砲身のついた腕を上げる。 「嘘……でしょ?」 キュルケの顔が引きつった。 ルイズはキュルケとは別のことを考えていた。 ゴーレムの右腕は自分たちに向いている。 でも胴体にある無数の砲身は全てがルイズたちを狙っているわけではない。 いくつもの砲身が品評会会場を向いている。 ──あそこには姫さまが ルイズは叫ぶ。 「ユーノ!急いで!姫さまを守って!」 ユーノが口を開こうとする。 何を言いたいかはだいたいわかる。ルイズはそれを視線で押さえた。 ユーノにはそれで通じた。 「わかった。アンリエッタ王女はきっと守るよ」 ユーノはシルフィードの背中からふわりと離れる。 「キュルケさん。お願いします」 「え?ちょっと、待ちなさいよ!」 あわててキュルケはユーノに変わってルイズを支えた。 ユーノは会場に向けて飛ぶ。 その下でゴーレムが不気味な音をあげていた。 ゴーレムが爆発した。 実際には全ての砲身より無数の火矢が同時に放たれたのだが、火を噴き轟音を上げる様はそうとしか見えない。 発射音は遙か遠くまで響く。学院の塔はふるえ、ガラスも割れて崩れ落ちる。 火矢の多くはシルフィードに殺到し、あるものは全く別の方向に飛ぶ。 その内、品評会会場に飛んだ火矢の数は決して少なくはなかった。 空を飛ぶユーノの下を火矢が次々に追い越していく。 会場まではもう、あと少しもない。 この後に来る惨劇を予想してユーノの顔が曇る。 「相棒。俺だ。俺を抜け。ちったぁ助けになるはずだ」 叫ぶ背中のデルフリンガーに手をかける。 鞘から刀身が抜けきった時に視界が変わった。 ロケット弾がゆっくり飛んでいる。 ユーノにはそう見えた。 なら簡単に追い越せる。 「どうするんだ?相棒」 「全部止めるよ!」 デルフリンガーの切っ先にシールドを展開。 ロケット弾の前に立ち、受け止める。直後に爆発。 その圧力を利用して方向を変えた。 「こんどは、あれ!」 次に前に出ているロケット弾の前に飛ぶ。 普段ならできるはずのない判断が瞬時にできる。 ユーノはそれに従い、空を舞い踊る。 ロケット弾が一つ一つ、順番に爆発の中に消えていった。 ゴーレムが出現してからアンリエッタが下した命令はただ一つだけだった。 「皆さんを安全なところに!」 その一言で彼女の近衛隊は動いてくれた。 空に起こる爆発にも動じないのは日頃の訓練のせいだろうか。 だが、そんな訓練をしていないアンリエッタもここから逃げ出す気にはなれなかった。 この国の王女としてだけではない。 空で戦う白い服の少女。 その桃色のブロンドを見てアンリエッタは確信した。 「ルイズ……」 ルイズがあそこで学院の守るために戦っている。 なら自分がなぜここから逃げられるのか。 そのアンリエッタに火矢──アンリエッタはロケット弾という言葉を知らない──が迫る。 アンリエッタは恐怖した。 火矢の威力は先に爆発した地面でわかる。 走ってもフライでも逃げられる速さではない。 その場で立ちつくし動けなくなる。 目を見開くアンリエッタの前に、空から落ちてくるような速さで誰かが降り立った。 背丈より長い剣を手にした少年のメイジだ。 少年は魔法陣を先に灯した剣を火矢に向ける。 「あ……」 止める暇もない。 火矢は魔法陣にぶつかり爆発する。 にもかかわらず爆風も熱風も魔方陣に阻まれアンリエッタを襲うことはなかった。 「早く逃げてください。アンリエッタ王女!」 少年の強い言葉にアンリエッタは背を押される。 「わかりました。ご武運を」 会場の生徒はほとんど避難している。 アンリエッタは近衛の騎士に手を引かれ、生徒たちを追った。 「チェーンバインド!」 振り返ると地面に描かれた魔法陣から、しなやかに舞い踊る光の鎖が火矢の行く手を遮った。 光の鎖は火矢をその踊りの中へと引き込む。 囚われの火矢はその中で、引き絞られ、くびれ、自らを火炎と変えていった。 前ページ次ページ魔法少女リリカルルイズ
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前ページ次ページ魔法少女リリカルルイズ 瓦礫の中ユーノは空を見上げる。 白い雲がだぶって見えた。 頭を振るとようやく視界が元に戻る。 「ルイズは?」 いた。 蔓がさらに巻き付き、2階建ての建物より高く持ち上げられていた。 (ルイズ、魔法を使って) 念話を使う。 もがくルイズからの応答は少し時間がかかった。 (無理よ。集中できないわ。きゃっ) ルイズが魔法を使うには集中と呪文が必要になる。 まだ即座に使用できるほどの技術を身につけてはいない。 なら…… 「僕が助けないと」 ユーノは再び空へ飛ぶ。 また地面を掘り起こして根が無数に伸びた。 それらは寄り集まり、壁のようになってそびえ、ユーノの行く手を遮った。 「うわあっ」 突如出現した壁にぶつかりそうになったユーノは慌てて止まる。 すると、壁になった木の根は新たに枝分かれを始めた。 枝は鞭となってユーノに降りかかる。 「うわ、このっ」 滝のように降り注ぐ鞭を右に避ける。 そこには別の鞭が右から迫っていた。 「くっ」 シールドで防ぐ。 動きが止まったユーノに下からさらに鞭が飛ぶ。 「チェーンバインド!」 光の鎖で絡め取り、地面に縛り付ける。 次は左上から。 右のシールドを解除して腕を上げる。 が、間に合わない 「あうっ」 頭をしたたかに殴られたユーノは回転しながら再び瓦礫に突っ込んだ。 煉瓦が吹き飛び、剣の形をした看板がへし折れる。 砂煙がもうもうと上がった。 「おい、おい!」 目が半分しか開かない。 青い空が見える。 うまく考えがまとまらない。 頭がぼーっとしてる。 「おい、おい!しっかりしろ。ぼうず」 ユーノは痛む頭で考える。 倒れているのはわかるが、なんで倒れているんだろう。 なんでこんな所にいるんだろう。 耳の中に入ってくる言葉の意味がわからない。 「いいかげんに起きな!ぼうず!」 目が覚める。 言葉が頭の中で意味を持っていく。 同時に、バラバラだった記憶が元に戻っていった。 「そうだ、ルイズを助けに行って……上から叩かれて……」 「ようやく起きたか。死んじまったかと思ったぜ」 誰かが起こしてくれたみたいだ。 「その……ありがとう」 ユーノは辺りを見回した。 だけど周りには瓦礫だらけ。 人は誰もいない。 「あれ?……空耳……かな?」 「空耳じゃねえよ。だいたい、いつまで俺をてめぇの尻に敷いているんだ!」 「わ、ごめんなさい」 飛び退くが、今まで寝ていた場所には誰もいない。 かわりに建物の残骸とそれに混じって剣や槍が転がっていた。 でも人はない。 「どこ見てんだ。ここだ、ここだよ」 声が聞こえる方をみてみる。 その先には人はおらず、錆びたユーノの背と同じくらいの長さの剣が一本あるだけだった。 「こ……れ?」 「そうだ。それが、俺だよ。ようやく見つけたか」 錆びた剣から声がする。 「デバイス?」 「デバイス?なんだそりゃ。俺はデルフリンガーってんだ。まあ、いいや。それより、あの化け物みたいな木は周りにあるモンを片っ端から殴って行ってるみたいだぜ。ここまで生えてこねえうちに逃げたほうがいいとおもうがね」 「だめだよ。逃げられない」 「なんでぇ?」 ユーノは空中で蔓に絡まれながらもがくルイズを指さす。 「ルイズを助けないと」 「なんだ、おめえあの娘っ子を助けてえのか」 「うん」 ユーノは迷うことなく答えた。 「そういうことかよ……よし、なら坊主。俺を使いな」 「え?」 ユーノは剣を掴もうとした手を、すぐに引っ込めた。 「僕は剣を使ったことがないんだ」 「使ったことないったって、おめえ使い手だろ?」 「使い手?ううん、僕は魔導師だけど」 「あーーっ、そういうことじゃなくってな。使い手ってのはな……俺もよくしらねえが、おめぇは使い手だから俺を使えるんだよ!」 「で、でも」 「いいから、俺を持ちやがれ!!」 「あ……うん」 ユーノはあわてて剣の束を持つ。 デルフリンガーと名乗る喋る長剣は長さはユーノと同じくらい、幅も広く、分厚いしっかりした作りだ。 錆は浮いていてもかなりの重量になる。 よく考えたら持ち上がるはずがない。 だが、ユーノはその剣が羽であるかのように軽々と持ち上げる。 左手に刻まれたルーンが光を放っていた。 「あ……」 「な、言ったとおりだろ?」 身長ほどもある剣が手になじんでいる。 今まで感じたことにない感触をユーノは扱いかねていた。 「おっと、そこでぼけている暇はないぜ。あの娘っ子、ますますまずいことになってるぜ」 ルイズの手足は蔓に覆われて見えなくなってしまっている。 ここからだとルイズは親指くらいにしか見えない。 なのに、ルイズが苦痛で顔をゆがめているのがはっきり見えた。 「行きな!小僧」 「ルイズっ!!」 ユーノは3度、空に体を舞わせた。 前ページ次ページ魔法少女リリカルルイズ
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前ページ次ページ魔法少女リリカルルイズ 部屋の灯りは落とされ、泊まる客もすでにベッドの中で静かに寝ている。 そこに人影が一つ静かに、しかし淀みのない足取りで入ってきた。 影はベッドの中をのぞき込み、寝ている客の頬をそっと叩いた。 「ルイズ、ルイズ、起きるんだ」 「あら?」 影は寝ている女から手を引いてしまう。 聞こえた声が予想とは全然違うものだったからだ。 「あら、誰かと思ったらワルド子爵。どうして、こんな時間に?もしかして結婚前に婚約者じゃなくて私と?」 「ば、ば、ば、馬鹿なっ」 寝ていた女、キュルケの艶をたっぷり含んだ声を聞いたワルドはベッドから飛び退く。 キュルケはゆっくり起き上がりながら、杖を一振り。 ランプに火がつき、部屋の中が揺らめく炎に照らされる。 赤い光を受けたキュルケは高く上げてから足を組み、その上に肘をついてあごに手を当て、うるんだ瞳をワルドに向けた。 ──ヴァリエールの婚約者をもらっちゃうのも悪くないわね。 なんてことを考えながら。 「こうなったのも運命よ。いいでしょ、今夜は……」 甘いにおいさえ香ってきそうなキュルケの声がワルドの耳をくすぐる。 ワルドは咳払いを一つ。 帽子をかぶり直すふりをして、驚きで平面になっていた顔を元に戻して気を落ち着ける。 「いや、そういうことをしている場合じゃないんだ。驚かないでくれ。この建物は何者かに囲まれている」 キュルケが大きく息をのむ。 声が出る前に、ワルドの人差し指がキュルケの口の前で立てられた。 「静かに。君も早く準備をしてくれ。ルイズは?」 「私の部屋にいるわ。寝る前に無理矢理取り替えられたのよ」 「なん……だって!」 ワルドは身を翻し、キュルケに止める暇も与えず、部屋に残っていたルイズの荷物を手に持ち、開けっ放しのドアの向こうに消えた。 急いではいても足音が高くならないのはさすが魔法衛士隊長と言ったところだろうか。 「ユーノ。あんたも起きなさい」 キュルケはさっきまでユーノが寝ていた机の上を見た。 そこにすでにユーノはおらず、扉のほうから小さい足音が聞こえた。 ルイズはドアを開ける音で半分だけ起きた。 目はまだ閉じたままだ。 「ルイズ。起きるんだ!早く!」 ワルドのその声で残り半分も起きる。 何かが落ちてきて、薄い胸の上が重くなった。 部屋の中は真っ暗だが、手触りで投げられた物が自分の学生服だとわかった。 「着替えるんだ。早く!」 剣のような軍装の杖を抜いたワルドは、油断無く部屋の外を見ながら鋭く叫ぶ。 「で、でもワルド。ここで着替えなんて」 ワルドがいる前での着替えは貴族の子女としてはあまりにもはしたない。 顔を赤らめたルイズはシーツで胸元を隠した。 「ルイズ。よく聞いてくれ。ここから逃げなければならないんだ」 「え?」 「急いで」 いつの間にか横に立っているタバサはすでに着替えを終えていた。 いつもの杖を持って、窓の外をちらちら見ている。 「たいまつの光がある」 「数は?」 「わからない。10以上はある」 その間にルイズは着替えを急ぐ。 鏡がないので襟が整えられないし髪も起きたばかりでかなり乱れていてみっともない。 ルイズは夜の暗さに感謝した。 「伏せて」 タバサの小さい体が思わぬ強さでルイズにぶつかる。 壁が吹き飛んだ。 元は壁だった岩が部屋の中に押し込まれ、木っ端微塵となる。 ベッドは壁につぶされ、引きちぎられた。 壁の破片が舞う音が落ち着くと、動く岩が新しい壁になっていた。 それもよく見れば新しい壁ではない。 作りの荒い岩でできたゴーレムの腕が動いている。 その腕がゆっくりと引かれていった。 「ルイズ、行こう」 ワルドに引き起こされたルイズは部屋の外に出る。 廊下を走ってすぐ、再び部屋にゴーレムの腕がたたき込まれる音が地響きと共に聞こえてきた。 「無事だった?」 廊下へ出てすぐにキュルケが追いついてきた。 「なんで、制服着てるのよ」 キュルケは向こうの部屋に制服を持って行ってないはずだ。 なのに何故か制服を着ている。 「あら、乙女のたしなみよ」 非常にわけのわからない理屈である。 もめていると再び地響きがした。 今度はさっきまでルイズ達がいた部屋とは違う部屋からだ。 「あの方向は!」 「どうしたの、ワルド」 ワルドが壁と床に阻まれた地響きの方向を沈痛な面持ちで見ている。 唇が少し歪んでいた。 「ギーシュ君の部屋の方向だ」 「え!」 なら、そこにいたギーシュはどうなっているか。 顔を見合わせたルイズ達はギーシュの部屋に急いだ。 斜めにへし折れた扉は生半可な力では開かない。 ワルドの魔法で切り刻みようやく中が見えるようになった。 「これでは……彼は」 ギーシュの部屋もタバサ達の部屋同様に惨憺たるものになっていた。 壁は吹き飛んでいるし、高価なはずの部屋の調度類は原形を保っていない。 瓦礫の下敷きになっているベッドも同様だ。 足は無理矢理広げられ、ぺちゃんこにつぶれてしまっている。 ギーシュもおそらくは、つぶされたベッドと同じ運命をたどっていることだろう。 「ギーシュ……ぱっとしないやつだったけど、同級生だったものね」 「冥福を祈る」 キュルケとタバサも胸の前で手を合わせ、彼の安らかな眠りを神に願う。 「ま、待ってくれ」 ギーシュの声が聞こえた。 「あら、ギーシュの声?」 突然の死に迷って出たのだろうか。 「彼は死んだ。声なんて聞こえない」 タバサは組んだ手が白くなるほどにきつく握り、微動だにしなくなる。 「だから生きてるってば!」 またも聞こえるギーシュの声。 だが、タバサには彼の姿形はどこにも見えない。 表情はそのままに、顔色だけがどんどん血の気を無くしていく。 「死んだ人間の声など聞こえない」 「だから。僕はここに!」 「聞こえない聞こえない聞こえない」 ひたすら同じ言葉を繰り返すタバサの横でルイズも胸の前で手を合わせた。 「始祖ブリミル。どうか、その御許にギーシュをお導きください。決して悪い人間ではありません」 ──どうか、お聞き届けください。 「だから、待ってくれ。僕はまだ死んでいない」 生きていた。 部屋の壁がぼろぼろ崩れ、その中からギーシュが転げ出てくる。 「なんだ。死んでなかったの」 「ひどいことを言わないでくれ」 「それで、壁の中で何してたのよ」 「瓦礫に潰されないように、練金で壁の中に隠れてたんだ」 貴族向けの宿の壁は結構厚い。 文字通り、瓦礫を防ぐ壁になりそうではある。 「だいたい、僕を助けてくれたのは君だろう?」 「私が?」 「ああ、君の使い魔のユーノが起こしてくれたんだ。あのまま寝ていたら、ゴーレムに潰されているところだったよ」 「ユーノが?」 小さな足音が聞こえてきた。 マントを引っ張る感触が順々に上ってきて、肩に重みがかかる。 (ユーノ) 何か、すごくほっとした。 あるべきものがあるべき位置に戻ってきた。 そんな感じになった。 女神の杵亭は何者かの襲撃により混乱していた。 それは最高潮に達し、あちこちから客達の悲鳴や怒鳴り声、叫び声が聞こえてきた。 中には窓から魔法を使って飛び降りた客もいるようだ。 「奴ら、一体何者なんだ?」 ワルドが髭に手を当てる。 少しだが考える時間があった。 宿の客達のパニックのおかげでしばらく襲撃者は上の方にいるルイズ達の方には来そうにない。 「ああ、そのことなんだけど」 さっきまで息をきらせていたギーシュが得意げに、バラをつけた杖を振りながら語り出す。 「彼らは僕たちを狙っているようだ」 「私たちを?」 ルイズの任務を考えればその可能性は十分にある。 「なんでわかるのよ」 「あいつらが魔法学院の生徒を捜せ、と言っているのを聞いたのさ」 「じゃあ、他の客は?」 「学生でないとわかったら、そのまま逃がしているみたいだ。あいつらにしてみれば、金蔓だろうに。よほど怖い頭目でもいるんじゃないかな」 「ふむ」 ワルドが髭を擦りながら目つきを鋭くする。 階下からの声は少しずつ大きくなっていた。 「いいか諸君。このような任務は、半数が目的地にたどり着ければ成功とされる」 意味のわからないルイズの横で本を閉じる音と風がした。 タバサがいつもと同じ表情で呟いた。 「囮」 「そうだ」 ワルドが意を得たりとうなずく。 「やってくれるかね?」 ワルドはタバサ、ギューシュ、キュルケの順に視線をやる。 「しかたないわね。私たちは何も知らないんだし。で、どうするの?」 「私たちは向こうの窓」 タバサが廊下の奥にある窓を杖で指す。 「あなたたちはあっち」 今度は逆の方にある窓を杖で指す。そちらの方が桟橋に近い。 2つの窓をを見比べたワルドがうなずいた。 「それでいこう」 「私たちが出たら、その後に続いて」 「いいだろう」 もう一度うなずいたワルドはルイズの腕を引いて窓に向かい歩き出す。 階下からの足音が聞こえてきた。 「ヴァリエール。あたしが囮になるのよ。ちゃんとやりなさい」 「わかってるわよ!」 振り返るキュルケは、まだ躊躇しているギーシュの背中を蹴り飛ばし、すでに窓の前で準備を始めているタバサを追いかけた。 前ページ次ページ魔法少女リリカルルイズ
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autolink ZM/WE13-P02 カード名:担い手と使い魔 ルイズ&サイト カテゴリ:キャラクター 色:赤 レベル:2 コスト:2 トリガー:1 パワー:8000 ソウル:2 特徴:《魔法》?・《使い魔》? 【自】アンコール[手札のキャラを1枚控え室に置く](このカードが舞台から控え室に置かれた時、あなたはコストを払ってよい。そうしたら、このカードがいた枠にレストして置く) サイト「俺はルイズを守ると決めたんだ!」 レアリティ:PR illust. コミックマーケット81 メディアファクトリーブース先行配布 ゼロの使い魔F エクストラブースター発売記念大会参加賞
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カードライバー 天尾翔や小芹アイなど、ライブオンのプレイヤーのこと。 CardをLiveするので「CardLiver」。 老若男女さまざまなタイプがいる。 どいつもこいつも安全なカードライブではなく危険なライブバトルをやりたがる。 上級者になればなるほど変態度を増している傾向にある。 作中描写から、TCGと同じくトルクを発生させているらしいが、詳細不明。 TCGにおいては、ゲーム開始時に場に置いておかなければならない必須カードで、なければルール上ゲーム不可能。 作中ではこのカードライバーカード、もしくはそれに代わるものが存在するかどうかすら説明されていない。 どうやってカードライブを行っているのかは謎である。 タイトルロゴで「D」が強調されていること等から、名前はおそらく車の運転手という意味での「Car Driver」とのダジャレだろう。 おかげで番組開始前はレース番組と勘違いするものが多く、新聞等の番組欄でも「Car Driver」と書かれていたことが多かったとか。 タイトルからしてダジャレまみれである。 【関連】 カードライブ ライブバトル